大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)2847号 判決

被告人 志茂達雄

〔抄 録〕

よつて先ず弁護人の控訴趣意第二点について考察をするのに刑事訴訟法が第三百十二条を設けて、訴因及びその追加、変更等の手続を定めているのは、審理の対象、範囲を明確に特定して、被告人の防禦に不利益を与えないためのものであることは、今更多言を要しないところ、記録によれば、検察官は、原審において、書面をもつて予備的訴因の追加を請求しているが、これが請求書の記載によれば、それぞれ日時、場所を異にして行われた被告人による全く別個の窃盗事実を内容とする二個の本位的訴因に対し、単に「然らざれば、その頃台東区所在上野駅構内において自称杉本重郎より賍物たるの情を知りながら合計約九千円で買い受け、もつて賍物の故買をしたものである」というにあつて、その追加にかかる罰条も、単に刑法第二百五十六条だけが掲げられておるにすぎず、その追加請求の趣旨が本位的訴因である二個の各窃盗の日時頃それぞれ別個に賍物故買の所為に出でたというにあるのか、それとも、二囘に亘る窃盗にかかる賍物を一囘に一括して故買したという一個の賍物故買の罪につき刑罰権の確立を求めるにあるのかまことに捕捉し難く、請求書記載の文理のみによるときは寧ろ、前後二囘に亘る他人の窃盗にかかる賍物をその情を知りながら一囘に一括して故買したものであるという単純な一個の賍物故買の罪につき刑罰権の確定を求める趣旨に解せられるものがあり、いずれにしても、原審が、斯かる訴因追加の請求に対し、右いずれの趣旨であるかの釈明ないしは訴因変更の手続を俟たずして原判示の如く、併合罪の関係にある二個の賍物故買の犯罪事実を認定処断したことは、冒頭説示の如き訴因制度定立の趣旨に照らし、畢竟訴訟手続の法令に違背し、その違背が、原判決に影響を及ぼすことの明らかな場合に該当するものというべきをもつて、所論において、原審が、右の如き処断に出でた点を捉えて、審判の請求を受けない事件について判決をした違法があるとの主張は、これを採用しないが、その所論の趣旨は、窮極において理由がある。

(三宅 河原 遠藤)

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